やっとエンジンがかかった今年の寸劇
今年の寸劇のテーマは新版「金色夜叉(お宮と寛一)」である。その配役の一人、寛一役の七ちゃんが苦しんでいる。セリフがなかなか覚わらないと彼女は言う。しかし、その原因は単なる老化により「セリフをすぐ忘れてしまう」のではなく、寛一役に自分が透過できないでいるらしい。昨年のテーマ「鶴の恩返し」で彼女の役に入っていく演技は私は非凡なものを感じた。よって、男役でも彼女の才から行くと面白い芝居ができると確信し、昨年末の練習スタートから、気合を入れて練習・演出してきた。が、一向にセリフが覚えられない、気分が乗らないとのたまう。そして、実際の興行での演技も、寛一役に入れず、自分の世界で劇をある程度作り上げてしまう。自分のアドリブ能力で劇自体は成立させてしまうのである。よって、お宮と寛一の愛憎の臨場感とは程遠いものとなってしまっている。そこで、劇の自分流の成立は認めるが、それは「金色夜叉」の本質と違ったものとなってしまっている。と本人に納得いくように説明し、今一度金色夜叉の寛一を演じて欲しいと説得し、後、練習を何度も繰り返し、私も気の入らない練習に声を荒げてしまったこともあったが、やっと、何とか寛一らしい演技が、3月8日の興行でできたと思っている。本人にもいろいろ言い分はあると思うが、本質を外さず大衆が喜ぶ演技をしてほしいとの気持ちは伝わったかも知れない。ビデオで何度も見直しても細かい点ではまだまだではあるが、セリフに魂は乗っかっている。